世界で一番馬鹿な男の、現在進行形の物語
僕は昔から親に言われてきた。
学習しない。
一回痛い目に合わないと分からん、お前は。
幸いなことに僕は大学生になってから一回どころか何回も
痛い目に遭っている。
その中でも、一番良かったな〜 痛い目遭ってんなあ〜
と思ったのは、六月九日土曜日。
バイトの面接の日である。
その日僕はエキストラとイベントスタッフの二つのバイトの面接
の予定を入れていた。
面接の場所は新宿で、住んでいる八王子からは一時間ほどかかる。
少し早めに僕は家を出た。
が、問題は早々に起きた。
地元にいた時からほとんど電車に乗ってこなかった僕は、電車そのものに慣れておらず、乗り換え時に迷いに迷って電車を逃してしまった。
プルルル プルルル ガチャ
すいません、今日面接の予約をしたタミというものなんですが
駅で迷ってしまって電車を逃してしまいまして。
はい。はい、それで遅刻になってしま.....あ、はい。えーと
(余裕持って言っとこ)十分ほど遅れると思います。
はい。はい。すみません。よろしくお願いします。
ガチャ ツーーーーー ツーーーーーー
逆方向の電車に乗ってた。もう、間に合う時間ではなかった。
電話で面接の取りやめをした。
次の面接まで、四時間ほど暇があった。お腹も携帯の充電も減っていた僕は、どちらも満たせてなおかつ安いマックで時間を潰すことにした。
と、ここまでくると勘がいい方はなんとなく察しがついたと思う。
そう。大正解です!僕は遅刻したのです!(嬉しそうに飛び跳ねながら)
僕はあの後、ゲームをしたりyoutubeをみて時間を潰し時々腕時計を見て、まだいける、まだいける、と滞在時間を伸ばしまくった結果、間に合わない時間になってしまった。
いや、距離的には問題なかった。ただ、始めてきた土地の初めて行く場所に地図アプリを見ながら圧倒的運動不足の体で走って行く
の無理があったようで、その建物の目の前に着いた時にはもう
集合時刻はとっくに過ぎていた。
六月九日土曜日 僕は新宿でマックを食べ短距離走をして
家に帰った。
ここで本題の痛い目にあった僕が学習したのか、ということについてであるが、一ミリも反省していない。
あの日以降も僕は幾度となく遅刻している。
生まれてからあの日まで僕は常に世界でいちばんのバカであり続けた。
そして、あの日から今まで僕は世界でいちばんのバカであり続けている。
しかし、あの日だけは違った。
赤の他人の人生に少し入り込む予定だったあの日。
邪魔するものがなに一つなかった空と、障害物のように配置されているどこの誰か分からない人々。
少しの希望をお気に入りのリュックに詰め、都会人になりすまし、
汗を垂らしながら新宿の街を走っていた僕は。
僕は世界でいちばん輝いていたし、ワクワクしていた。
反省はしてないけど。
ま、楽しかったからしょうがない。